大判例

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東京高等裁判所 昭和37年(ラ)734号 決定

記録によれば、原裁判所は抗告人を控訴人とし、有元寿々子外四名を被控訴人とする同庁昭和三六年(レ)第六五一号(原審、渋谷簡易裁判所昭和三六年(ハ)第二二八号)建物収去、土地明渡請求控訴事件につき、昭和三七年一〇月一九日判決の言渡を為し、抗告人に宛てゝ右判決正本在中の封書一通を郵便送達の方法で発送したところ、同年同月二七日目黒郵便局の集配員前鶴憲一がこれを抗告人の肩書住所に持参したが控訴人不在のため西本操が抗告人の同居人としてこれを受取つたこと、及び抗告人は同年一一月一三日上告状を原裁判所に提出して前記判決に対する上告をしたことがそれぞれ認められる。仍て右西本操に交付して為された前記判決正本の送達が民事訴訟法第一七一条第一項所定の同居者に対する送達として適法か否かを検討するに、本件記録一一九丁及び一二〇丁に綴られている抗告人に対する原決定正本の送達報告書及びその各符籖の記載並びに抗告人提出の西本操作成のものと認められる証明書と題する書面の記載によると西本操は、抗告人の肩書住所地に建物(アパート)を所有し、自らこれに居住している者であり、抗告人は同人から右建物の一室を借り受けてこれに居住しているものであつて抗告人はその勤め先が小学校の警備係であり、かつ、独身である関係上三日に一度位しか帰室しないことが認められ、これによれば抗告人は右西本とは全く別個独立の生活をしているものと推認される。ところで前記法条にいう同居者とは送達名宛人と共同生活をする者を指称し、仮令同一建物たるアパートに居住する者であつても其の室を異にし別個独立の生活をしている者の如きはこれに含まれないものと解すべきところ、前記認定の事実によれば、西本操と抗告人とは同一建物内に居住しているが、その居室、生計を異にし別個独立の生活をしているのであるから、右西本を前記法条にいう抗告人の同居者といゝ得ないことは明らかである。なお右西本が抗告人から抗告人宛の書留郵便の受領権限を与えられていたものと認めるに足る資料はなく、寧ろ前示送達報告書及び符籖の各記載に徴すると、西本は抗告人からそのような権限は与えられていなかつたものと認められる。従つて抗告人に対する前記判決正本はそれが西本に対して交付された時を以て適法に送達されたものということはできず、原審としては、宜ろしく職権を以つて抗告人が右西本から前記判決正本を事実上受領したか否か、もし受領したとすればそれは何時であつたか等を調査して前記判決が抗告人に適法に送達されたと認め得べき時点を確定の上(抗告人は、西本から判決正本を昭和三七年一一月三日に手交されたことを前提とし、上告期間は同日から進行すべきものと主張しているが、これによれば抗告人は西本から判決正本を事実上受領した時にその送達があつたものとすることに異議がないものと認められるが、右判決正本の手交が果して一一月三日にあつたか否についてはなお証拠によつてこれを確定することを要するであろう。)、果して本件上告が上告期間の経過後に提起されたものなりや否やを判断すべきである。

(鈴木忠 谷口 宮崎)

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